歌仙「コロナ禍」
※『炭俵』パロディー

初折の表
(発句)  梅花落ち奇病怖がる武漢かな
      バイカオチ キビョウコワガル ブカンカナ

(脇)   至る処にウイルス潜む
      イタルトコロニ ウイルスヒソム

(第三)  春節の爆買客を持て成して
      シュンセツノ バクガイキャクヲ モテナシテ

(四句目) バス旅すればコロナ禍来たる
      バスタビスレバ コロナカトキタル

(五句目) 名月やブルーシートの屋根の上   ※月の定座
      メイゲツヤ ブルーシートノ ヤネノウエ

(折端)  アベノマスクを倉庫の隅に
      アベノマスクヲ ソウコノスミニ
初折の裏
(折立)  虚偽答弁ソーリは妻に困惑し
      キョギトウベン ソーリワツマニ コンワクシ

(二句目) 三密なれど晩夏の旅路
      サンミツナレド バンカノタビジ

(三句目) ずるずると同じ轍なりクラスター
      ズルズルト オナジテツナリ クラスター

(四句目) 雨の六月自粛解除す
      アメノロクガツ ジシュクカイジョス 

(五句目) 貰いたる金はネットのデータのみ
      モライタル カネワネットノ データノミ

(六句目) 申請詐欺も有罪の事
      シンセイサギモ ユウザイノコト

(七句目) GO TO にエビデンス無くリバウンド
      ゴーツーニ エビデンスナク リバウンド

(八句目) キャンセルばかり増える三日月   ※月の定座
      キャンセルバカリ フエルミカヅキ

(九句目) ヒルカラと霧の街にて感染し
      ヒルカラト キリノマチニテ カンセンシ

(十句目) アビガン効かば隔離一時
      アビガンキカバ カクリヒトトキ

(十一句目)上野まで花を眺める人の影     ※花の定座
      ウエノマデ ハナヲナガメル ヒトノカゲ

(折端)  知事の念仏ステイホームよ
      チジノネンブツ ステイホームヨ
名残の表
(折立)  防護服振り回されし塵袋
      ボウゴフク フリマワサレシ ゴミブクロ

(二句目) 家族と居ても肺炎患う
      カゾクトイテモ ハイエンワズラウ

(三句目) 納涼の密接運ぶ隅田川
      ノウリョウノ ミッセツハコブ スミダガワ

(四句目) 老爺八人ステーキ喰らう
      ロウヤハチニン ステーキクラウ

(五句目) 夢十夜スペイン風邪の百年後
      ユメジュウヤ スペインカゼノ ヒャクネンゴ

(六句目) 白百合咲けど巣籠りファースト
      シラユリサケド スゴモリファースト

(七句目) 戸を閉めて一人で眠る重症者
      トヲシメテ ヒトリデネムル ジュウショウシャ 

(八句目) アテンダントは転職探し
      アテンダントワ テンショクサガシ

(九句目) 暖かな声を聞くなりオンライン  ※恋句
      アタタカナ コエヲキクナリ オンライン

(十句目) 新たな春もズームの講義
      アラタナハルモ ズームノコウギ

(十一句目)花見酒違法パーティー繰り返し  ※花の定座
      ハナミザケ イホウパーティー クリカエシ

(折端)  青麦踏んでワクチン待たん
      アオムギフンデ ワクチンマタン
名残の裏
(一句目) 休校の夏空遠きガラス窓
      キュウコウノ ナツゾラトオキ ガラスマド

(二句目) 給食途絶え婆の雑炊
      キュウショクトダエ バーバノゾウスイ

(三句目) ブレーキにアクセル噴かす寒の入り
      ブレーキに アクセルフカス カンノイリ

(四句目) 医は仁術か否剣術ぞ
      イワジンジュツカ イナケンジュツゾ

(五句目) 陽炎の強毒デルタ迫り来て
      カゲロウノ キョウドクデルタ セマリキテ

(挙句)  五輪を前に緩みの日本
      ゴリンヲマエニ ユルミノニホン

(房総自由民権資料館2021年1月)

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歌仙「続コロナ禍」
※『猿蓑』パロディー


初折の表
(発句)  世界中コロナ退治や冬籠り
      セカイジュウ コロナタイジヤ フユゴモリ

(脇)   苦し苦しと人々の咳
      クルシクルシト ヒトビトノセキ

(第三)  第二波は拡散も無く収まりて
      ダイニハワ カクサンモナク オサマリテ

(四句目) 瞬く内に三波始まる
      マタタクウチニ サンパハジマル

(五句目) 語られぬ博多会食月凍る    ※月の定座
      カタレレヌ ハカタカイショク ツキコオル

(折端)  師走千人オーバーシュート
      シワスセンニン オーバーシュート
初折の裏
(折立)  白梅の一輪咲ける夕間暮
      シラウメノ イチリンサケル ユウマグレ

(二句目) 鳥インフルを焼く処分かな
      トリインフルヲ ヤクショブンカナ

(三句目) 対策の初めはソーシャルディスタンス
      タイサクノ ハジメワソーシャル ディスタンス

(四句目) 喉にエクモの夜寒の看護
      ノドニエクモノ ヨサムノカンゴ

(五句目) 天の川皺だらけ迄エッセンシャル
      アマノガワ シワダラケマデ エッセンシャル

(六句目) メル友を待つ巣鴨のセレブ
      メルトモヲマツ スガモノセレブ

(七句目) 攀じ登り議会乱入汗みどろ
      ヨジノボリ ギカイランニュウ アセミドロ

(八句目) トランプ叫ぶ国の暑さや
      トランプサケブ クニノアツサヤ

(九句目) 義を守るメルケル吹き消す春嵐
      ギヲマモル メルケルフキケス ハルアラシ

(十句目) 武漢の調査スイスに帰る
      ブカンノチョウサ スイスニカエル  

(十一句目)花の雨上人世を経る八百年     ※花の定座
      ハナノアメ ショウニンヨヲヘル ハッピャクネン

(折端)  ロックダウンをロンドン三度
      ロックダウンヲ ロンドンミタビ
名残の表
(一句目) 五六万補償付けたる春の水
      ゴロクマン ホショウツケタル ハルノミズ

(二句目) 自粛時短のでこぼこ道で
      ジシュクジタンノ デコボコミチデ

(三句目) 宵闇に提灯持てど学者にて
      ヨイヤミニ チョウチンモテド ガクシャニテ

(四句目) 後手の施策に苦情を零す
      ゴテノセサクニ クジョウヲコボス

(五句目) 凩に貼紙見ゆる売店舗
      コガラシニ ハリガミミユル ウリテンポ

(六句目) 常に盾突き病床守る
      ツネニタテツキ ビョウショウマモル 

(七句目) 細腕の小料理商う炭火哉
      ホソウデノ コリョウリアキナウ スミビカナ

(八句目) 妓女を篩に掛ける薄野
      ギジョヲフルイニ カケルススキノ

(九句目) 袖下で永田の塔を転げ落ち
      ソデシタデ ナガタノトウヲ コロゲオチ

(十句目) マクロン罹患セーヌの霙
      マクロンリカン セーヌノミゾレ

(十一句目)破れ屋もピークアウトぞ池の月   ※月の定座
      ヤブレヤモ ピークアウトゾ イケノツキ

(折端)  晴海の島のPCR
      ハルミノシマノ ピーシーアール
名残の裏
(一句目) 雲の峰御室の寺を孫の恋      ※恋句
      クモノミネ オムロノテラヲ マゴノコイ

(二句目) 濁世の糧はデリバリーなり
      ジョクセノカテワ デリバリーナリ

(三句目) 難波江に都構想やらトリアージ
      ナニワエニ トコウソウヤラ トリアージ

(四句目) 身を尽くしてもコロナ禍の雹
      ミヲツクシテモ コロナカノヒョウ

(五句目) 花冷えや家鴨弔う九十九里      ※花の定座
      ハナビエヤ アヒルトムラウ クジュウクリ

(挙句)  人の動けぬ御代の危うさ
      ヒトノウゴケヌ ミヨノアヤウサ


(房総自由民権資料館2021年2月完)